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2016.06.20

「金融口座の自動情報交換制度」続報その1

昨年末にお知らせしましたが、OECDが中心となって進めている『金融口座の自動情報交換制度 / Automatic Exchange of Information (”AEOI”)』の整備が進んでいます。

この制度は、「租税居住地(Tax Residence)以外にある金融機関の口座について、租税居住地の税務署へ口座情報を自動的に報告する」という制度となっています。

例えば「日本居住者が香港のHSBC銀行などに口座を持っていると、日本の税務署へ自動的に残高等の報告が上がる」ということです。

アメリカではすでにFATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)という同様の制度が始まっており、アメリカ国籍やグリーンカード保持者の金融口座情報は自動的にアメリカ当局へ情報が上がるようになっています。

このFATCA制度を見た各国税務署が「いいじゃん、ウチもやりたい」となったことで、AEOI制度が検討されたと言われています。

AEOI制度は『共通報告様式 / The Common Reporting Standard (“CRS”)』に準拠して各国で準備が進められています。

制度的にはFATCAと似ています。しかし大きく異なる点として、FATCAはアメリカ市民権を対象としていますが、CRSは租税居住地(Tax Residence)を基準にしています。そのため報告対象となるのは、税金を納めるべき国以外で、金融口座を持ってる個人、法人、株主が対象となります。

2017年に第一回目の情報交換をする予定の国は55カ国。その中にはBVI、ケイマン、セーシェルなどのタックスヘイブン各国も含まれています。

2018年に第一回目の情報交換をする予定の国は47カ国。日本、中国、香港、シンガポールなどアジア主要国はこちらのグループに含まれています。

CRS基準の更なる詳細は、次回のブログでご案内します。

 

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2016.05.03

伊勢志摩サミットまで円高は続くのか?

4月28日、日銀が金融政策決定会合で予想外の追加緩和見送りを決め、1日でドルに対して4円以上の円高、その後もさらに円高が進み本日1年半ぶりの105円台に突入した。

このまま円高の流れが止まらない場合、政府は為替介入をおこなうのだろうか?

過去の例からみて、お盆などの日本のマーケットが休みの時に円高に触れやすい傾向はあるが、購買力平価が100~105円と考えられていることをふまえると、現時点でも決して円高ではなく適正な水準だといえるだろう。

また、今月末開催のG7サミットで議長国となる日本は、国際協調姿勢を示すためにもサミット前に為替介入はできないという見方が一般的だ。

そもそも今までの円安は、政府(財務省)主導の為替介入で円安になったわけではなく、日銀主導の金融緩和で発生させていた。そのため、政府主導による為替介入のみで安定的に円安に進むかは未知数である。

加えてブルームバーグから、日銀のETF(指数連動型上場投資信託)により日経225社のうち200社が10位以内の大株主となっている、とういう衝撃的な報道があった。この件に関しては、米国、ユーロ、中国でも同様に、株式相場が割安の際に政府や中央銀行が資産買い入れをおこなっていることを考えれば、そこまで大きな問題に見えないかもしれない。

しかし、日本の場合は決して割安でない株式相場でも、まだ買い入れをおこなおうとしている。株式を高値で買うことにより出口(売るタイミング)が見えず日銀が大きなロスを抱えてしまう可能性は十分にあるし、市場原理を多く歪めてしまうことは事理明白だ。きっと、将来的に日銀のETFの買い入れが難しくなるのは時間の問題だろう。

加えて日銀は、4月末の金融政策決定会合で、「マイナス金利の実体経済への波及を見極めていきたい」との発言をしている。マイナス金利の効果の一つとして期待されていた株高・円安は儚くも市場に否定されてしまった格好だ。黒田日銀総裁は、財務省の財務官時代に度々為替介入をおこない市場に勝ってきた実績があるが、残念ながら今回は思うようにいっていないようだ。

金融政策決定会合 、FOMCなど円安に転換するきっかけとなるイベントはしばらくなく、
サミットでも円安(為替介入)が歓迎されないであろうから、しばらくは急激な円安が望めないのだろう。

 

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2016.04.14

パナマ文書でHSBCの口座開設が更に難しく

パナマ文書が大きく世間を賑わせています。

世界中のオフショア法人情報を管理していることで有名なパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から2.6テラバイトの情報が漏えいし、世界の大企業や富裕層、さらには政治家の資産隠しなどが暴露され各国の政治情勢にまで影響を与えている状況です。

イギリスのキャメロン首相、ロシアのプーチン、ウクライナやアルゼンチンの大統領、中国の習近平や毛沢東まで大物の名前が続々とパナマ文書に登場、アイスランド首相に関しては辞任にまで至りました。有名スポーツ選手や芸能人、日本の大企業の名前も取り上げられ、脱税やマネーロンダリングに関与していないか調査が進められています。2.6テラバイトという膨大なデータ量であるため全ての調査にはまだまだ時間がかかり、今後さらに詳細な事実が発覚しそうです。

このように大騒ぎの原因となっているオフショア法人の活用ですが、オフショア法人の活用自体が違法ということではありません。
「タックスヘイブン(租税回避地)の法人を活用」と聞くと、非常に怪しい会社と思われがちですが、金融の世界では一般的に使われているトラストなどのスキームに組み込まれています。世界的に有名な外資系の金融機関の持株会社がケイマン諸島にあるということは往々にあります。

しかし匿名性であるがゆえに、脱税やマネーロンダリングの温床になりやすいのは事実です。そして脱税やマネーロンダリングに対する政府の対策の厳しさは増しています。

例えば、2013年からアメリカで施工されている「FATCA」により、世界の銀行はアメリカ人の口座情報をアメリカ国税(IRS)に報告する義務がありますし、アメリカ以外でも2017年には「税務における金融口座の自動情報交換制度」が導入されるよう整備が進められています。

銀行口座に限らず、オフショア法人の匿名性に対する厳しさも増しており、2016年4月1日から 、BVI法人の役員は政府登記を義務付けられました。基本的に非公開である点は変わりませんが、必要があれば調査されやすくなったと言えます。

そして、パナマ文書で、ほぼ地球の裏側の香港にも影響がでています。
以下サイトにある、流出したデータの集計を見てみましょう。
https://panamapapers.icij.org/graphs/

・Top 10 countries where intermediaries operate?
会社設立の仲介業者が多い国トップ10は?

- 香港が1位です。

・Countries with the most active intermediaries
顧客数(会社設立数)が多い仲介業者はどの国に多い?

- 香港が1位です。

・The 10 banks that requested the most offshore companies for clients
オフショア法人が多い銀行トップ10は?

- HSBCが3位と4位です。合わせるとダントツトップです。
(1位は信託サービスなので銀行からは省いて考えました。)

つまり、、、香港やHSBCがマネーロンダリングの温床ではないか?と疑いをかけられやすい事態となっています。
今朝の報道でも、香港に仲介業者が最も多いという事実に基づき香港金融管理局(HKMA)が動き出しており、モサック・フォンセカを通して設立されたオフショア法人の銀行口座がないか各銀行にチェックをおこない関連資料の提出を要求しているとの情報が話題になっていました。

HSBCは2012年にアメリカ政府よりマネーロンダリングの罰金19億ドルを受けています。最近でも、BNPパリバに90億ドル、クレディ・スイスも26億ドル、アメリカ政府の対応に各金融機関が戦々恐々としている事態です。

このような状況なので、オフショア法人の香港での口座開設はますます厳しくなるでしょうし、オフショア法人のみならず香港法人についても徐々に開設が厳しくなるのではないでしょうか。海外での口座開設、運用を考えている方は早めの行動をお勧めします。

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2016.04.01

日本ウェルス銀行(NWB)の一般投資家向けセミナーに参加

香港に新しくできた日系新銀行の日本ウェルス銀行(NWB)の一般投資家向けセミナーに参加してきました。

3月29日付けの日経新聞にも本セミナーが紹介されていましたが、参加者の半分が日本在住者ということもあり海外投資熱を実感しました。セミナーでは、各国の経済状況や金融情勢、投資商品についてそれぞれの専門家がレクチャー。

週末の3日間に分けて以下のセミナーを開催。NWB主催ということもあり、著名な方も講師をされていました。

1.マイナス金利の世界が語るもの(マネックス証券)
2.ハイブリッド証券投信戦略(プリンシパルインベストメント)
3.仕組み商品の新トレンド(コメルツ銀行)
4.アジア不動産投信(Convoyインターナショナル)
5.改革続くベトナム市場の魅力(ドラゴンキャピタル)
6.マネージド・フューチャーズ投資戦略(ウィントンキャピタルアジア)
7.「本当の中国」と「3つのビジネスチャンス」(GMOコンシェルジュ)
8.オフショア法人設立とそのメリット(TMFグループ)
9.香港での株式上場(プライスウォーターハウスクーパーズ)
10.2016年グローバルマーケットとの注目点(日本ウェルス銀行)

金曜日の夜はマイナス金利についてのセミナー後、レセプションパーティーを開催。
香港一の夜景とともに、シャンパンとフィンガーフードなんて素敵です。

香港の夜景フィンガーフード

 

 

 

 

今回のセミナーでは、保険投資の話は無かったのですが、様々な投資手法のレクチャーがありました。
カナダの不動産投資、優先株投信、オフショア法人を活用したトラスト、マネージドフューチャーズ等々、知ってそうで知らない情報が盛りだくさんです。
日本の投資環境が、井の中の蛙ということを思い知らされます。


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「プリンシパル優先証券ファンド」は、優先証券で運用している投資信託。優先証券とは、ざっくり言うと株式と債券の中間に位置するような証券で、株式ほど変動リスクが高くなく、債券ほど利回りが低くありません。優先株はニッチなマーケットのため、発行している会社のほとんどは金融機関等の大手企業です。株式や債券との相関性も低いため、下げ相場でも比較的安定的に運用してくれるそうです。過去5年の利回りは、平均すると年利約6%くらい。

2011年: -0.73%
2012年: 20.54%
2013年: 3.02%
2014年: 10.21%
2015年: 2.39%

「ファンドリンク債」は、デリバティブ(ファンド)と債券を組み合わせた仕組債の一種です。仕組債と言えば、EB債(他社株転換条項付き債券)のようなハイリスクの商品もあるのですが、NWBが紹介した商品は、元本保証型のファンドリンク債です。期間は6年間と少し長いですが、ファンドの価格が上がった場合はその上昇分が還元され、下がった場合は元本保障となります。このようなテーラーメイド型の商品が、10万米ドルから作れてしまうとはNWBは凄いですね。

「マネージド・フューチャーズ」のセミナーでは、ヘッジファンドのWintonがレクチャーしてくれました。Wintonはシステム運用型のヘッジファンドで、直近5年を平均すると年利約5%くらいとなります。
2011年: 6.68%
2012年: -3.24%
2013年: 7.98%
2014年: 15.23%
2015年: 1.77%

ヘッジファンドのほとんどは、相場と連動性が少なく運用方法がわかりにくいため、機関投資家向け商品となるのが一般的です。NWBではまだヘッジファンドを取り扱っていないようですが、このようなヘッジファンドを小分けにして販売している運用会社も香港にはいくつかあります。

NWBは個人向け資産運用に特化しており、預入資産10万米ドル(約1200万円)からとなっているため少し敷居が高いかもしれません。しかし、NWBは日本人が日本語で対応してくれるということが強みでしょう。HSBCの口座を持っていても、英語ができなければ十分に使いこなすことは難しいですからね。

≪ Nippon Wealth Limited(NWB) ≫
ウェブページ:https://www.nipponwealth.com/
口座開設フォーム:https://www.nipponwealth.com/form/
日本語電話:0120-951-104(通話無料)
電話番号:+852-3958-8828‏
16/F, The Peninsula Office Tower, 18 Middle Rd., T.S.T., H.K.
(香港九龍尖沙咀中間道18號半島酒店辦公室大樓16樓)

2016.03.03

海外在住者は日本の口座維持は困難か

オフショア香港では先日、香港在住者が日本のマイナンバーなしでの海外送金を断られたというケースをもとに、今後の対策について論じた。

日本の銀行訪問時に口座閉設手続きを勧められた海外在住者もおり、日本の銀行窓口に近づかないことが得策であると考えていたが、2月22日の金融庁の発表によれば、銀行への正式な届け出をすれば海外送金はできるようになるようだ。

だが、銀行への正式な届け出をする必要があるということは、現在利用している多くのサービスが利用できなくなるということを意味する。

例を挙げると、SMBC信託銀行(旧:シティバンク)では海外転居の際は「住所変更届」と「居住性変更に関する届出書」の提出が案内されているが、これにより以下のようなサービスが利用停止となる。

・登録済み国内送金先への電話での送金や定額自動送金
・登録済み送金先へのネットバンキングでの送金、都度振込
・投資信託口座や証券取引口座の開設や購入取引
・保険商品の新規および増額申し込み
(一部のみ抜粋)

銀行に限らず、証券会社、FX会社、海外ATMでキャッシングできるカードを発行する会社など、マイナンバーの提示を要求してくる場所が次々に増えているようだ。

海外在住者が日本の口座を活用できなくなる日は近づいている。

 

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