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2016.11.17

香港で法人口座開設できる銀行は他にもある

世界的にマネーロンダリング対策が厳しくなる中、香港も銀行口座開設がかなり厳しくなってきた。

香港法人を設立しても、拠点が無く人も雇っていないようなペーパーカンパニーは開設できなくなりつつある。香港での銀行口座開設の必要性を説明できればまだ口座開設ができる金融機関はあるが、日本法人やオフショア法人においては口座開設審査すら断られることがほとんどだ。

HSBCとハンセン銀行は、かつては香港に登記しないオフショア法人(セイシェル法人やアンギラ法人等)の口座開設も中心となって受け付けていたが、現在は事業用のオフショア法人はほぼ断られている状況だ。

香港で口座が開けない場合は、タックスヘイブン地域にあるマイナーな金融機関で口座開設するか、i-accountのような銀行ではないシステムを使い決済するしか方法はなくなるだろう。しかし、法人の口座を開設するにあたっては、あまりにもマイナーで日本語での情報量が少ない金融機関を利用するのには多少なりとも不安がある。

香港で他に法人口座開設ができる金融機関はないか探し回っていたところ、香港にある日系資本の金融機関のニッポンウェルスリミテッド(NWB)に問合せをしてみるに至った。

NWBは香港法人、日本法人、オフショア法人の口座開設を受け付けているそうだ。日本法人の口座開設を受け付けている金融機関は恐らく香港ではNWBだけではないだろうか。

NWBは資産運用に特化しているので、事業用途としてはもちろん使えない。HSBCに多くの方が資産運用目的で口座開設しているが、言語の壁にぶつかり多くの方が断念している。一方、NWBは日本人が多く在籍し、日本語対応のため、資産運用目的の方には良い選択肢になるのではないだろうか。

NWBでは、12月1日~3日に金融の専門家を講師に招いて投資フォーラムが開催されるようだ。有料となっているが、海外での法人口座開設、資産運用などに興味のある方にとっては良い機会となりそうだ。
https://jp.www.nipponwealth.com/local/investment_forum03.php

香港での銀行口座開設は今後もさらに厳しくなっていくのではないだろうか。まだ望みがあるうちに対策を練っておきたい。

2016.09.28

HSBC銀行員に賄賂で法人口座開設を試みた中国人が6ヶ月の禁固刑に

2016年春頃から香港のHSBCの法人口座開設審査が非常に厳格になっているが、それを象徴するかのような裁判沙汰の事件が発生し話題を呼んでいる。

7月12日、香港法人の株主かつ役員である中国人ビジネスマン(チェン氏、44歳)が、HSBC法人口座の開設インタビューの際に1,350香港ドル相当(約17,600円)の「シャネルNo.5」の香水をHSBC銀行員に渡して有利な対応を受けようとしたのだ。

HSBC銀行員は香水の受け取りを拒否し、これに関する裁判が今週実施された。裁判官はチェン氏の行為を「金融都市香港の評判に影響を与えかねない重大な犯罪」と判断し、6ヶ月の禁固刑を言い渡した。

実はチェン氏は2012年の時点で一度香港法人の口座開設に成功していたようだが、2016年2月に、「長期間使用されていない」という理由で閉鎖されていたとのことが報告されている。

そして2016年6月、チェン氏は再度口座開設を試みようとしたが、事業内容の説明についてさらに詳細な資料を求められるなど以前より明らかに厳しい条件を突き付けられ、「銀行員と仲良くなる」行為を思いついたのだと言う。

中国本土でも賄賂はもちろん違法行為だが、裏では「手土産」のような感覚で頻繁におこなわれている。いずれにせよ、香港ではそのような行為は通用しなかったようだ。

さて、この先香港の法人口座開設の審査はどこまで厳しくなるのかという不安があるが、9月20日にはHSBCアジア太平洋地区のCEOピーター・ウォン氏が、マネーロンダリングなどの金融犯罪への取り締まりが世界でますます強まっており、香港での口座開設審査はさらに厳しくなる可能性がある、と伝えていることからも、悲観的にならざるを得ない状況である。

実は9月8日にHKMA(香港金融管理局)は香港の銀行向けガイドライン「De-risking and Financial Inclusion(リスク回避と金融包摂)」を発表しており、口座開設の難易度が緩和されるのでは?と期待が高まっていたばかりであるが、このガイドラインは強制力のあるものではなく、まだまだ口座開設の難易度は下がらないというのが一般的な認識のようだ。

しかし、HSBC以外の銀行に関して言えば、各銀行により方針は若干異なり、日本人でも口座開設が比較的容易な銀行が存在する。ただ、これらの銀行もいずれはHSBCと同じレベルまで審査が厳格化される可能性が十分考えられるので、開設は早めにおこなうのが得策だろう。

 

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2016.08.09

「金融口座の自動情報交換制度」続報その4

今まで3回に渡り『金融口座の自動情報交換制度 / Automatic Exchange of Information (”AEOI制度”)』をお伝えしてきましたが、海外に財産を隠すことが非常に難しくなってきていることがわかったかと思います。

特に5千万円以上の財産を海外にお持ちの方は「国外財産調書制度」の対象となっているため、何らかの対策が必要となります。2015年度の国外財産調書の提出者は8,184人でした。

https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2015/kokugai_zaisantyosyo/kokugai_zaisantyosyo.pdf

実際の申告対象数は定かではないのですが、一説には5万人程と言われています。すなわち大部分の方がまだ提出をしていない、海外に財産を隠していることになります。そしてそのほとんどの方は、残念ながらAEOI制度で炙りだされてしまうことになるでしょう。

そのような方はどのように対策をすれば良いか?

やはり、正直に国外財産調書を提出することをお勧めします。

そして海外資産は、キャピタルゲイン・配当・収入の発生しない長期運用の資産に変えることをお勧めします。

そのような資産に変えることによって、実現益が発生しないため所得税がかからなくなります。

そしてそのような資産として最も適した商品は、生命保険となるでしょう。

安定運用型の生命保険の場合、複利で5%前後で回るため20年ほど運用すれば2-3倍になります。そのくらいの期間を運用できれば、相続が発生したとしても、相続税を払ってお釣りがくることになります。

現時点で、日本居住者が買える生命保険会社は数社のみです。年々厳しくなっているため、来年には買えなくなってしまうかもしれません。

もしご興味がある方は早めに行動することをお勧めします。

 

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2016.07.26

「金融口座の自動情報交換制度」続報その3

前回に引き続き『金融口座の自動情報交換制度 / Automatic Exchange of Information (”AEOI制度”)』のお話です。今回は、AEOI制度の核となる「租税居住地の税務署への自動報告」から逃れられるかどうかを検証してみたいと思います。

AEOI制度の対象となる以下の2つのパターンで検証してみたいと思います。

1つ目は、日本居住者がHSBC銀行(香港)に個人口座を持っている場合
2つ目は、日本居住者が外国法人の株主となり、HSBC銀行(香港)に法人口座を持っている場合

===日本居住者がHSBC銀行(香港)に個人口座を持っている場合===

日本人の場合、口座開設時に提出した住所証明の国が「租税居住地(Tax Residence)」となります。

運転免許証等の日本の住所証明を提出された方は、「租税居住地は日本」となり、HSBCの残高は日本の税務署へ報告されます。
もし香港以外の住所で住所証明を提出された方は、その住所証明の国の税務署へ報告されるはずです。
そして香港の住所で住所証明を提出された方は、AEOI対象外となり、どこにも報告されることはありません。

そのためAEOI制度から逃れるためには、香港の住所証明をHSBCへ持って行き、登録住所の変更を依頼する必要があります。

HSBC銀行が認める住所証明は以下の通り。

1. 3ヶ月以内のステートメントや請求書等(公共料金、携帯電話、有料テレビ、税金納付書)
2. 香港の賃貸借契約書
3. その他、HSBCが定める書類(下記参照)

https://www.personal.hsbc.com.hk/1/content/hongkongpws/pdf/applyaccount_note.pdf

この中で日本居住者が手に入れられるものは、携帯電話のステートメントだけかもしれません。某電話会社では、香港IDがなくても保証金さえ払えばパスポートで回線契約可能です。しかし、宛先がオフィスビルの場合は住所証明として認められない可能性があるため、香港在住の協力者の住所を利用するのがいいでしょう。

===日本居住者が外国法人の株主となり、HSBC銀行(香港)に法人口座を持っている場合==

AEOI制度の対象となるのは外国法人の株主のみとなっており、役員は対象外となります。持ち株比率が何%の株主が対象となるかは、明確な指針がまだでていません。日本の税法を考えると、過半数以上の比率を持つ株主ということになるかもしれませんが、HSBC銀行では10%以上の株主の住所証明の提出も求めているため、10%以上かもしれません。

法人の株主となっている場合、AEOI制度から逃れる方法は2つです。

1.株主として登録住所を変更し、銀行へ通知する
これは上記の住所変更同様の手口を用います。まず、登記所の株主住所を変更して、銀行に住所証明とともに変更の依頼をするのが良いでしょう。
(注:登記住所を偽ることは違法です)

2.株主の名義を香港在住者に変更する
一般的なノミニー(名義貸し)の場合は、銀行に通知しているため最終受益者ベースで報告されます。そのため、信頼のできる香港在住者の名義を借りて、株主を変更することになるでしょう。しかしこの手法の問題点は、香港在移住の方がサイン変更をして銀行取引ができてしまう可能性があるということです。そのため、本当に信頼できる人でないと難しいのかもしれません。

上記以外の方法でも、金を購入して貸し金庫に入れる、AEOI制度非加盟国の銀行に預ける等の抜け道は若干あるようです。いずれにせよ、逃れることは一筋縄ではいかないようです。
本記事は違法行為を幇助するものではありませんので自己責任でお願いします。

 

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2016.07.08

「金融口座の自動情報交換制度」続報その2

前回に引き続き『金融口座の自動情報交換制度 / Automatic Exchange of Information (”AEOI”)』のお話です。

まず参加国と開始年度は以下の通り。
https://www.oecd.org/tax/transparency/AEOI-commitments.pdf

今回は、AEOI制度のルールとなるCRS基準の概要とスケジュールについて説明します。
CRS基準では、以下のように報告のルールが定められています。

報告義務を負う金融機関は「銀行、保険会社、証券会社、ファンド会社、トラスト等」
報告対象となる口座は「個人口座、法人(トラストや財団も含む)、主要株主」
報告される個人情報は「名前、住所、居住地、税務ID(日本ではマイナンバー)、誕生日、出生地」
報告される金融情報は「残高、投資収益」

香港でのCRS基準のスケジュールは以下の通り。(香港は日本同様に2018年に第一回目の情報交換を目指しています)

2017年1月   新規口座はCRS基準に順守
2017年10月  香港税務署へのAEOIレポーティングシステムの確認
2018年1月   香港税務署が香港金融機関に口座情報の提出を要求
2018年5月   金融機関が香港税務署に口座情報の提出を開始
2018年9月   香港金融機関と香港税務署が1回目の口座情報の交換完了
2018年12月  香港税務署がAEOI制度参加国と口座情報の交換を行う

上記を見る限り、税務署への報告を回避することはほぼ不可能となっており、外国に持っている金融資産はほぼ丸裸にされてしまうようです。
ノミニー(名義貸し)についても、銀行に通知してあるものは最終受益者名義で報告されてしまうとのこと。

今回の制度開始により、日本居住者の中で一番注意するべき方は、国外財産調書の対象者(日本居住者で海外に5000万円以上の資産を持っている方)となります。

次回のブログでは、AEOI制度に対してどのように対処するのが良いのか考えてみたいと思います。

 

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